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新英語教育研究会神奈川支部HP

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バラ色の人生 La Vie En Rose

●文法で展開その1: closeの品詞
1行目のHold me close and hold me fast.「抱き寄せて しっかり抱いて」のcloseやfastの意味を生徒に問うとおもしろいと思います。発音と意味が適切にとれているでしょうか? closeは「クロゥズ」と発音する動詞「閉じる」ではなく、「クロゥス」と発音する副詞「近くに」です。Come closer.「近くに来て」などの例文を紹介した後、さらにcloseの使い方を確認してみましょう。以下のTは教師、Sは生徒で、架空対話です。
T:「その店は閉まっている」と英語で言ってみて。
S: The shop close…ですか?
T:The shopは三人称単数で、ここでは現在形だからcloseではなくclosesになるけれど、現在形ならThe shop closes at eight.「その店は8時に閉まる」のように習慣的動作になります。close「閉まる」という動作とbe close「閉まっている」という状態を区別しましょう。では、ヒントです。お店などのドアのところによくある看板にopenとあったら、その裏には何て書いてある?(…と看板の絵を板書)
S:うーん…。あっ、closedです。
T:そうです。形容詞open「開いて…」とセットになる形容詞はclosed「閉まって…」ですよ。
…のようなやりとりはいかがでしょうか。closedが形容詞というのは英語学習上の盲点だと思います。
The shop    is       open.
その店は ~いる 開いて…
closed.
閉まって…
The shop opens at ten.
10時に開く
closes at eight.
8時に閉まる
●文法で展開その2: fastの品詞
Hold me close. 近くに
fast. しっかり
tight. きつく
Hold me fast.のfastは速度が「速い」のではなく、動詞fasten「しっかり留める」の系列の「しっかり」という意味です。このfastや先ほどのcloseは辞書で副詞に分類されますが、私はこの用法は形容詞と副詞のグレーゾーンにあると思うので、品詞にはあえて言及せず、hold me tight(きつく/ぎゅっと抱く)、stand fast(しっかり立つ)など、ここでは類似表現と例文を示して、さらっと展開したいです。
・The boat was stuck fast in the mud.
ボートは泥にしっかりはまっていた。
・He drew her close to him. (以上Longman)
  彼は彼女を引き寄せた。
●内容で展開その1:フランス語歌詞と比較

彼が私を腕に抱き、

私にささやくと

人生がバラ色に見える

この歌はフランス語の原曲を作って歌ったシャンソン歌手エディット・ピアフ(Edith Piaf)が1942年に作詞、ルイギー(Louiguy=Louis Gugliemi)が作曲、そしてマック・デイヴィッド(Mack David)が英訳、1950年にルイ・アームストロング(Louis Armstrong)が歌ってヒットしました。ピアフの仏語歌詞には英語歌詞のthe magic spell「魔法の呪文」というような表現はないのですが、まさにla vie en rose「ラ・ヴィ・アン・ロゥズ」という響きは呪文のごとく、フランス的な甘美な恋への憧れを英語話者・日本語話者に喚起する気がします。仏語歌詞は三人称のil「彼」を用いた客観叙述ですが、英語歌詞は二人称のyou「あなた」を用いた語り歌になっており、映画『麗しのサブリナ』Sabrina (1954)にはオードリー・ヘップバーンが口ずさむシーンがあります。
●内容で展開その2:恋愛を考える
最後は、映画解説者の故・淀川長治さんの『美学入門』(マドラ出版)でまとめましょう。「日本の映画は、恋愛に関しては貧しいね。…恋に対して一番がんばるのは、やっぱりフランスだね。アメリカは生きるための恋、イタリアは家族ぐるみ、イギリスには、同じ恋でも戒めがある。イギリスは、恋の教典を持っているの。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』。」「愛とか恋があるからこそ、人間はいつまでも人間に執着できるの。愛も何もなくなって、仙人みたいに山の中に入ったりするのは、もう人間じゃない。人間失格ね。恋愛とかセックスは、人間の最高の華。その華のつかみ方が下手だったら、人間は惨憺たる地獄に堕ちちゃう。だから、そのためにも、愛の訓練ができていたほうがいいの。」「本当の愛は、相手を尊敬し、相手の人格を認め、しかも、飽きないこと。…そういう相手を見つけるまでは、僕は五十歳になっても結婚しないほうがいいと思う。」 淀川さんの言葉で私も勇気百倍です。


La Vie En Rose
Words & Music by Mack David & Louiguy
Original French lyric by Edith Piaf, 1946
Recorded by Louis Armstrong, 1962

抱き寄せて しっかり抱いて
魔法の呪文を あなたはかける
「ラ・ヴィ・アン・ロゥズ(バラ色の人生)」と。
キスされると、天がため息をつく
そして目を閉じるけれど
「バラ色の人生」が見える
あなたの胸に押し当てられると
私は別世界に、
バラが咲く世界にいる
そしてあなたが話すと、天使が天上から歌う
ありふれた言葉なのにラブソングになるみたい
心と魂を私にちょうだい
そうすれば人生はいつも
「バラ色の人生」になるわ




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